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2013年7月に『大腸癌取扱い規約 第8版』が発刊されました.今回の改訂では,様々な新しい事項が記載されました.内視鏡診断ではLSTの位置づけが記載され,病理学的には「リンパ節構造を伴わない壁外非連続性癌進展病巣(EX)」が定義され,脈管/神経侵襲の病巣以外のEXが転移リンパ節と扱われることになりました.また,SM浸潤度によってT1がT1aとT1bに亜分類されました.さらに,遠隔転移(M)の定義を領域リンパ節以外のすべての転移と改め,肝転移(H)と本特集で扱われている腹膜転移(P)が遠隔転移に含まれることになりました.その他,前取扱い規約では結腸と直腸とは別に記載されていた直腸S状部(RS)は直腸に含まれることが明記され,内視鏡治療の根治度に新たに根治度EB(CurEB)も追加されました.
このように多くの新しい事項が追加されましたが,腹膜転移の分類は変更されていません.前回の取扱い規約の改訂時に洗浄細胞診を病期分類に反映させるか否かの議論がすでにありましたが,今回の改訂でも洗浄細胞診は病期分類に含まないことになっています.この点に関しては,現在多施設のプロジェクト研究が進んでおり,次回の改訂には反映される可能性も残っています.本特集の「腹膜幡種を考える―大腸癌と胃癌の違い」の項でも触れられているように,大腸癌と胃癌では腹膜転移,あるいは洗浄細胞診の扱いが異なっています.胃癌では洗浄細胞診陽性は遠隔転移と同等の位置づけとして扱われています.このような違いは,生物学的な悪性度の違いによるものと考えられ,大腸癌では大腸癌に特化した腹膜転移に対するアプローチの重要性を示しています.大腸癌に対する化学療法が進歩し,腹膜転移に対しても新たなアプローチを考えなくてはならない時期にきていると思われます.このような背景のなか,本特集では大腸癌の腹膜転移に対して様々な方向から解説をしていただきました.本特集が臨床現場でお役に立つことを期待しております.
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