FOCUS
二期的肝切除の新たな動向
吉留 博之
1,2
,
宮崎 勝
2
Hiroyuki YOSHIDOME
1,2
1さいたま赤十字病院外科
2千葉大学大学院臓器制御外科学
pp.322-326
発行日 2015年3月20日
Published Date 2015/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210678
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はじめに
肝切除は大腸癌肝転移に対する治癒の可能性のある唯一の治療法であることは広く認識されているが,近年の新規抗癌剤と分子標的薬の進歩により,大腸癌肝転移例に対する治療戦略は変化してきている.肝切除不能症例に対するconversion chemotherapyの有用性が報告され,切除適応の増加により大腸癌肝転移例の予後の向上が認められた1).肝切除手技においては積極的な血管合併切除の併施など肝切除自体の技術的な向上と,肝予備能評価法やSynapse Vincentなどを用いた肝切除後の予測残肝量の測定やシミュレーションにより肝切除後の安全性も向上している.
しかしながら両葉多発肝転移例においては,しばしば全腫瘍をupfrontに切除しようとした場合に残肝量不足となり,切除不能の判断となる場合がある.肝切除の観点からみた多発肝転移例の治療戦略としては,門脈枝塞栓術の併施により残肝量を確保したうえでの一期的肝切除や,両葉多発肝転移例を切除する手段としての二期的肝切除(two-stage hepatectomy:TSH)がある.TSHにより両葉多発例の切除適応が拡がることとなり,結果として大腸癌肝転移例の予後の向上に寄与しうることがわかってきた2).一方で,TSHは2期目への移行は70%程度であり,またその待機期間も長いことから,ALPPS(associating liver partition and portal vein ligation for staged hepatectomy)という新たな治療法が近年報告された.これらの適応と意義,問題点につき詳述する.
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