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直腸癌に対する外科治療は大きな変革の時代を迎えている.1908年,Milesの報告でリンパ節郭清の概念が導入された.その後,拡大リンパ節郭清が主流の時代となり,排尿障害や性機能障害などの術後の機能障害が生じる可能性があるが,腫瘍学的により効果のある治療が行われた.その後は,QOLの向上が重視される時代になり,これに伴って機能温存手術が広く行われるようになった.さらに近年は,欧米で広く行われている術前化学放射線療法などの集学的治療を行う施設も増加してきている.また,化学療法の進歩により術前化学療法など放射線を用いない集学的治療の臨床試験も行われるようになっている.手術では,低侵襲手術である腹腔鏡下手術を行う施設が増加し,ロボット手術も登場している.このように大きく変化そして進化している直腸癌治療であるが,いまだに昔からの大きな課題は解決されていない.すなわち,外科治療後の局所再発である.直腸癌の局所再発では,疼痛や下肢の浮腫など様々な症状を生じ,臨床上大きな問題である.こうした局所再発に対する最新の治療に焦点をあてるため本特集を企画した.本特集では,多方面から直腸癌の局所再発に関して専門の先生方に解説していただいた.近年の診断学の進歩を,そしてその進歩に基づいた最新の外科的アプローチを,さらには近年局所再発治療に大きな影響を与えている放射線治療,すなわち重粒子線の治療についても触れていただいた.重粒子線のような新たな期待される治療法と,外科治療とをどのように棲み分け,あるいは組み合わせていくかが今後の大きな課題である.そのためには,まさに近年重要性が指摘されている外科医,放射線科医,腫瘍内科医などを含めた,multidisciplinaryなアプローチが重要となっている.そして,それでも治癒が困難な局所再発に対しては,緩和ケアも含めたmultidisciplinaryなアプローチを行っていく必要がある.明日からの,直腸癌局所再発の診療に本特集が役立つことを期待している.
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