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これまで「高度医療」(第3項先進医療技術)の形で実施されてきた内視鏡下手術用ロボット「ダヴィンチ」を用いた前立腺悪性腫瘍手術が,2012年度診療報酬改定で保険適用されることが決定しました.「ダヴィンチ」の適用は拡大しており,前立腺悪性腫瘍手術以外にも,ダヴィンチによる手術が高度医療の形で実施されています.厚労省保険局医療課によれば,前立腺悪性腫瘍以外の手術についても「有効性がないわけではなく,今後,確認されれば保険適用されることになる」としており,今後は他の臓器の悪性腫瘍に対しても,ダヴィンチ手術が保険適用となっていくことが期待されています.
現在,ダヴィンチ手術を行うためには,規定の研修を受けIntuitive Surgical社の認定する資格を得ることが条件となっています.一方,現在広く行われるようになった腹腔鏡下手術に関しては,腹腔鏡下手術の特別な資格なしで行うことが可能です.しかし,本特集の森論文に「本邦では1990年代に,十分な準備や科学的検証のないままに拙速な内視鏡下手術導入を余儀なくされたのも事実である.……より安全な手術施行や指導医の育成のために,一定レベル以上の技術や指導性を有する医師の認定制度が必要であるとの認識から,技術認定制度が議論されるようになった(後略)」と紹介されているように,安全な手術手技の普及と指導性を有する医師を認定するという趣旨で日本内視鏡外科学会による技術認定が行われています.その技術認定試験の2010年の合格率は,臓器により異なりますが,24~55%と必ずしも高率ではありません.そもそも技術認定の水準は指導者レベルにあるため,腹腔鏡下手術に携わる全員がこの資格をもっている必要はないと思います.ただ,各々の技術向上のためには,この認定制度で示しているポイントを把握して日常の臨床を行っていくことは大変意義のあることと思われます.このような趣旨で本特集を組みました.本特集が,実臨床での腹腔鏡下手術の手技向上のためにお役に立てることを期待しております.
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