Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・17
肝部下大静脈閉塞症に対する下大静脈—右心房バイパス術
久保田 宏
1
,
村上 忠司
1
,
青木 秀俊
1
,
一色 学
1
,
赤坂 伸之
1
,
安田 慶秀
2
,
田辺 達三
2
1市立旭川病院胸部外科
2北海道大学医学部第2外科
pp.1667-1674
発行日 1988年10月20日
Published Date 1988/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210201
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
Budd-Chiari症候群を伴った肝部下大静脈閉塞症の手術目的は,肝静脈閉塞による肝機能障害や門脈圧亢進症による種々の合併症予防,ならびに下大静脈閉塞による下肢静脈のうっ滞を改善することにある.その手術適応にあたっては,一般状態の評価とくに肝機能ならびに出血傾向の評価,局所の閉塞範囲と血栓の有無,肝静脈の閉塞状態などを十分に検討せねばならない.
肝部下大静脈閉塞症に対する手術方法は,それが膜様閉塞である場合には,用手膜破砕術,バルーンによる血管形成術が,また広範囲閉塞例に対しては,直接的な静脈血行再建が行われている.しかしながら,これらの手術は,術直後の成績は比較的良好であるが,再発することが多く,また,術中の出血,肝庇護など多くの問題点を残している.
近年,抗血栓性に富み,圧迫閉塞を予防し得るリング付e-PTFE人工血管が開発されてから,広範囲閉塞例やcoarctation様狭窄に対し,この代用血管を用いて,下大静脈—右心房バイパス術による血行再建が行われる傾向にある.
本稿では,下大静脈—右心房バイパス術の2自験例を呈示し,その術式ならびに問題点について述べてみたい.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.