Japanese
English
論説
肝部下大静脈閉塞症13例の検討
Obliteration of the inferior vena cava in the hepatic portion: review of 13 cases
小倉 正久
1
,
阿部 秀一
1
,
市原 荘六
1
,
本田 善九郎
1
,
室井 竜夫
1
,
野村 満
1
,
杉浦 光雄
1
Masahisa OGURA
1
1東京大学医学部大2外科教室
pp.74-82
発行日 1967年1月20日
Published Date 1967/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204207
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はじめに
Budd-Chiari症状群と文献上記載されている疾患群は,原発性肝静脈内膜炎または炎症性,肝硬変性,肝腫瘍性の肝変化による2次的肝静脈血栓閉塞症であつて,閉塞部位は肝静脈の下大静脈開口部,または肝静脈枝であり1)2),症状は急激に発症経過し,早期に死亡するものが多いとされている.一方,本邦のBudd-Chiari症状群と報告されているものは,164例中,下大静脈閉塞を伴う慢性例が89%を占めており,成書記載のBudd-Chiari症状群とは明らかに異なる経過をとる疾患であると思われる.
また,血管撮影法,カテーテル検査法の進歩普及に伴い,下腿静脈瘤,胸背部静脈怒張,肝脾腫を有するこれらの患者に接する機会が増加し3),これらを詳細に検討すると,肝部下大静脈に閉塞がみとめられ,肝静脈にも同時に流出路障害がある一群の疾患群であることが経験されるようになり,これはBudd-Chiari症状群とは異なつて,むしろ原発性の肝部下大静脈閉塞症と名付ける独立した疾患と考えたほうが妥当であると考えられるようになつた.本症の成因に関しては,いまだ不明の点がなくないが,木村教授4)は先天性と考え,Ductus Arantiusの閉塞機転と関係があると想像している.
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