特集 —そこが知りたい—消化器外科手術のテクニックとコツ96
肝臓
肝部下大静脈閉塞症の膜破砕,血栓摘出
田辺 達三
1
,
加藤 紘之
1
Tatsuzo TANABE
1
,
Hiroyuki KATO
1
1北海道大学医学部第2外科
pp.863-865
発行日 1988年5月30日
Published Date 1988/5/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210055
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肝部下大静脈閉塞症の手術目的は肝静脈閉塞によって惹起される門脈圧亢進症と肝機能障害,下大静脈閉塞によって惹起される下肢静脈うっ滞障害の改善にある.
その閉塞病態は種々であるが,膜様閉塞には膜破砕,血栓を伴う広範閉塞には直接的な静脈再建が行われる.木村らによって発表された経心房的膜破砕術は画期的術式であったが,今日ではカテーテルによる膜破砕,静脈拡張が簡便に行われるようになり,応用される機会はきわめて限られている.血栓を伴う広範閉塞に対しては肝脱転法やSenning法による直視下の閉塞除去,血栓摘除,またより広範閉塞に対しては代用静脈の進歩によってバイパス移植が行われる傾向にある.
本症ではその病態から肝腎機能障害の合併があり,著しい側副血行の形成から出血の危険も大きい.いかなる術式を応用する場合でも,この点に慎重な配慮を加えることが成功のための最大のコツとなる.
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