特集 消化器癌の相対非治癒切除
EDITORIAL
小山 研二
1
Kenji KOYAMA
1
1秋田大学医学部第1外科
pp.1285-1286
発行日 1988年8月20日
Published Date 1988/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210143
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最近教室に来られたパラグアイからの留学生に,ここで一番学びたいことは何であるか,と聞いた.「日本では癌に対する系統的な手術を行っていて素晴しい.特に,規約に従ったリンパ節郭清を是非学びたい」という.「パラグアイでは手術に一定の規準がなく,リンパ節も転移のありそうなところだけを摘出するだけであるし,それも術者の好みによって変わる.日本のような,定められた手術操作を学びたい」ともいった.このように,日本の癌手術が高く評価されるのは大変うれしいことである.これはいうまでもなく各種の癌の取扱い規約があって,しかも殆んど全ての外科医がそれに従って治療しているからである.しかし,欧米の医師からは必ずしも全面的には賛成していない意見も聴かれる.かつて東京で行われた国際消化器外科学会(CICD)のさい,胆嚢癌に対する胆嚢床部肝部分切除を当然のごとく話したら,切除した肝に癌があったか否かを厳しく聞かれた.癌浸潤のなかったことを話したら,いかにも「不必要な手術操作をしたな」というジェスチャーをされた記憶がある.また,胃癌の手術のパネルディスカッションでも,転移のないリンパ節をなぜ郭清するのか,というやや非難めいた質問が出されていた.取扱い規約に従って全ての外科医が,個々の症例の差異などまるで考えないように画一的に,整然と一定の手術を行っていることに一種の違和感をもつのかもしれない.
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