特集 がん放射線療法の現況と進歩
EDITORIAL
阿部 光幸
1
Mitsuyuki ABE
1
1京都大学医学部放射線科
pp.1147-1148
発行日 1989年9月20日
Published Date 1989/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210437
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はじめに
放射線治療は超高圧放射線治療時代に入ってから,がん治療に根治的な意義を有するようになり,外科手術と並んでがんの局所療法としての地位を確立してきた.しかし,この超高圧放射線治療も約40年の歴史を経て,その限界もまた明らかになってきた.今日,放射線治療の抱える最大の問題点は次の二つに集約されよう.第一は,放射線の物理的線量分布の局在性の悪さである.すなわち,放射線感受性の高い重要臓器が病巣の近傍に存在する場合,外照射では十分な腫瘍破壊線量を安全に照射することができないことである.第二は,通常使われている放射線では制御し難い放射線抵抗性のがんが存在することである.たとえば悪性黒色腫,骨肉腫,あるいは低酸素性がん細胞などである.これらの問題点,すなわち放射線の線量分布の改善と,生物効果の増強という課題に対してどのような研究が行われ,また如何なる進歩がもたらされたかについて概説する.
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