特集 転移性肝癌の治療
EDITORIAL
出月 康夫
1
Yasuo IDEZUKI
1
1東京大学医学部第2外科
pp.677-678
発行日 1990年6月20日
Published Date 1990/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900109
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癌に対する治療は,試行錯誤をくり返しながらも確実に進歩している.これには3つの側面がある.第1は画像診断,腫瘍マーカーをはじめとする診断法の大幅な進歩によって,早期診断,早期治療がなされるようになったことで,癌治療成績の向上にはこれが寄与しているところが最も大きい.第2は集学的治療の進歩と普及とによって癌患者の延命と生存中のQuality of Lifeの向上が得られるようになったこと,そして第3は外科手技の進歩によるものである.
本特集で取り上げられた“転移性肝癌の治療”は勿論進行癌の治療の一つであり,少し以前までは,肝臓に転移があれば治療してもあまり意味がないとあきらめられていたものである.現在でも,これを積極的に治療しても癌が完治することは稀で,一旦は縮小,軽快しても早晩再発,増悪することが多い.しかし,中には医師の予期に反して(?)長期に生存し,また一時的にではあっても社会復帰をはたすものもあり,少なくともQuality of Lifeの向上が得られるものは少なくない.治療にあたる医師にとっても,希望と全力をつくしているという充足感をあたえてくれる.
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