特集 胆嚢癌の外科
EDITORIAL
小山 研二
1
Kenji KOYAMA
1
1秋田大学医学部第1外科
pp.1713-1714
発行日 1989年11月20日
Published Date 1989/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210550
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胆嚢癌のイメージは,ここ10年で著しく変わった.1981年に胆道癌取扱い規約が制定され,それとほぼ同時期に超音波検査法が確立された.さらに,肝区域の概念が臨床応用され,CUSAが一般化されるなどの診断,治療の一大変革が起こった.筆者はちょうどその頃,胆道癌の勉強を本格的に始めたという事情もあり,この大きな波の記憶は鮮明である.
最初にやったことは,それまでの胆嚢癌症例を規約に従って再整理,再分類することであった.その過程で,手術記録や標本の記載が意外に不完全,不明確であることを知ったり,記載の量と有用な情報の量とはまったく無関係であることも認識したのであった.何例かは,病理組織標本を作り直す必要があり,ホルマリンの刺激に涙を流しながら探した.整理不十分と言えばそれまでだが,お目当の胆嚢を見つけ出した時の喜びは大きかった.この時期には,全国各地でこんな作業が行われたに相違ないことは,それからしばらくして多くの施設から自験例の胆道癌取扱い規約に基づいた分析の報告が続いたことから明らかである.深達度と予後,stage決定因子など共通した分析に基づく学会発表や論文が多かったが,その一つ一つが新鮮で,異なる施設間での比較ができることは大きな進歩であった.当時筆者は東北大学第1外科で佐藤寿雄教授のもとにいたが,教室の症例の分析からいくつかの報告を行っている.それらを振り返ってみた上で現在の問題点について述べてみたい.
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