特集 Drug Delivery Systemを利用した癌治療
EDITORIAL
高橋 俊雄
1
Toshio TAKAHASHI
1
1京都府立医科大学第1外科
pp.1713-1714
発行日 1988年11月20日
Published Date 1988/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210208
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P.Ehrlich(1889)は,病原微生物にのみ毒性を示し人体細胞には毒性を持たない薬剤による化学療法の概念を初めて医学に導入し,その後,細菌感染症の治療は飛躍的に進歩した.抗癌剤においても癌細胞だけに毒性を示し正常細胞には毒性を及ぼさない薬剤,すなわち,癌選択毒性のある薬剤の開発のために,これまで膨大な化合物あるいは天然物質のスクリーニングが行われてきた.しかし,未だこのような理想的抗癌剤は見出されていない.近年,多くの薬剤が開発され,癌細胞に対して優れた効果を持つ薬剤もあるが,同時に正常細胞にも強い障害を及ぼすため臨床的に投与が制限されたり,時にはこの副作用のため患者の予後に重大な影響を及ぼすこともある.そこで,既存の抗癌剤を癌の主病巣や転移巣にできるだけ選択的に投与し,正常細胞にはできるだけ薬剤を分布させない工夫を行うことにより,副作用を少なくして多量の抗癌剤を投与して癌化学療法の効果増強を図ろうとする試みがなされるようになった.これが癌のターゲティング療法(targetingchemotherapy)である.この用語は最初Gregoliadis(1973)がリポソームを用いて標的へのターゲティングの可能性を示したことから始まった.
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