Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・11
肝切除を伴う上部胆管癌根治術(Ⅱ)—肝左葉切除術および中心部肝切除術
加藤 紘之
1
,
田辺 達三
1
1北海道大学医学部第2外科
pp.507-513
発行日 1988年4月20日
Published Date 1988/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209969
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はじめに
近年,上部胆管癌に対し肝切除を伴う根治的切除手術が行われるようになってきたが,術式の選択,とくに左右どちらの肝葉を切除すべきかの議論は多い.再建の容易さと根治度の高さでは拡大右葉切除を基本術式とすべきことに異論はない.高度黄疸の持続,繰り返す胆管炎のため肝予備機能が予想以上に低下している症例が多く,できるだけ肝容積を残して術後の肝不全に備えたいが,これに対しては前号で述べたごとく内側区域上半部の温存などの工夫がなされている.その意味では肝左葉切除は切除肝容積が比較的少なく安全性は高い反面,再建の困難性がある.特に胆管拡張の著明でない例では根治性を追求して末梢胆管へ進むほど切離後の前後区域枝胆管が分離してしまうし,胆管壁の支持性も弱く,安全確実な胆道再建に最大の注意を払わねばならない.
一方,胆管炎の持続や高齢などのため肝予備機能の改善が得られず肝葉切除が無理と判断される症例も多い.このような場合には従来の肝門部切除術を拡大した中心部肝切除術が適応される.これは内側区域および右前区域の各々下半部を切除することによって,より末梢まで胆管とその周囲肝実質を切除して局所浸潤に対処しようとするものである.やや術野は不良であるが,尾状葉全切除も可能である.本稿ではこれらにつき症例を中心として手術のコツを述べる.
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