Japanese
English
臨床研究
治癒切除不能膵癌に対する徐放性制癌剤の使用経験
Clinical study on slow releasing anticancer agent for non-curative carcinoma of the pancreas
真辺 忠夫
1
,
戸部 隆吉
1
,
嘉悦 勲
2
,
吉田 勝
2
Tadao MANABE
1
1京都大学医学部第1外科
2日本原子力研究所・高崎研究所
pp.1397-1403
発行日 1982年9月20日
Published Date 1982/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208133
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はじめに
最近,CT,echo等の画像診断技術が向上するに従つて,比較的初期の段階で診断され手術される膵癌例が多くなりつつあることは喜ばしいが,他の消化器癌に較べると,膵癌の手術切除率は依然低く,とくに膵の解剖学的位置の関係から治癒切除を行いうる症例は少ないのが現状である.進行膵癌例の中には門脈合併切除を伴つた広範膵全摘により一応肉眼的治癒切除を行いうる症例もあるが,実際開腹してみると,癌が上腸間膜動脈根部に高度に浸潤しているために切除不能に終るか,あるいは,ほとんどの癌病巣は切除し得ても血管周囲に癌の遺残を余儀なくせざるを得ない場合が少なくない.一方では膵癌患者はその癌固有の高度な疼痛に悩まされることが少なくない.現実には治癒切除不能例に対して臨床症状の改善を含め何らかの処置をせざるを得ない.
このような状況の中で東京女子医大消化器病センターの羽生ら1)は,日本原子力研究所・高崎研究所,東京女子医大医用工学研究所との共同研究により低温放射性重合により制癌剤を高分子担体中に複合含有させることにより,徐放,持効性の制癌剤を作る技術を開発した.今回,われわれは東京女子医大消化器病センターを中心とした徐放性制癌剤研究会に参加し,徐放性マイトマイシンC(MMC)カプセルを教室における治癒切除不能膵癌に対して使用する機会を得,満足すべき臨床効果を得たので若干の考察を加え報告する.
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