特集 術前ワークアップマニュアル—入院から手術当日までの患者管理
Ⅰ.術式別:術前患者管理の実際
1.頸部手術
バセドウ病手術
杉野 公則
1
1伊藤病院
pp.17-22
発行日 1996年10月30日
Published Date 1996/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902440
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バセドウ病の術前管理の要点は甲状腺機能状態の把握とコントロールにある.良性疾患であるし,無理をして手術に臨むべきではない.リスクのある症例は手術以外の治療法を選ぶ.基本的に若年者が手術の対象となることから,他の疾患のように全身状態の評価を厳重に行うことは少ない.バセドウ病特有の合併病変もあり注意を要する.抗甲状腺薬が使用できる症例は外来で甲状腺機能が正常になっていることを入院間近に確認しておくことが肝要であるが,入院時に機能異常を認めた場合は,これを是正してから手術日時を決める.抗甲状腺薬がその副作用のために使用できない場合は,入院後にヨード剤,βブロッカー,ステロイド剤を使って可及的速やかに甲状腺機能を正常化させ手術を行う.この際,ヨード剤には“エスケープ現象”が認められ,ヨード投与後2〜3週間でその効果が突然失われ,甲状腺ホルモンが再上昇してくる.そのため,ヨードを主としてコントロールする場合には開始後2〜3週後の手術をめざさねばならない.
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