疾病の病態生理—最近の考え方・11
バセドウ病
福地 稔
1
1大阪大学医学部第1内科
pp.1470-1473
発行日 1972年11月1日
Published Date 1972/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916492
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はじめに
バセドウ病とは,甲状腺の機能が著しく亢進して血中に大量の甲状腺ホルモンが持続的に分泌されるため,臨床的にはいろいろな代謝亢進症状を伴い,さらに典型的症例では眼球突出が認められる.バセドウ病ではその甲状腺腫は全体に腫大する,いわゆるび漫性であるが,これとは別に甲状腺の一部が結節状に腫大した腺腫(アデノーマ)の一部で,腺腫からの甲状腺ホルモン過剰産生分泌による甲状腺機能亢進症がみられるが,これは眼球突出を伴うことはなくプランマー病としてバセドウ病とは区別される.プランマー病は比較的少ない疾患であるため一般的には甲状腺機能亢進症,すなわちバセドウ病として用いられる場合も少なくない.
バセドウ病という呼びかたは,ドイツやドイツ医学の影響の強いわが国で主に用いられているが,これは1940年にドイツの開業医Basedowが報告した甲状腺腫,頻脈,精神不安,下痢などの症状を伴う症例が本疾患に関する初めての記載であるとの立場に立っているためである.ところが英米では,1835年にアイルランドの内科医Gravesが甲状腺腫,眼球突出,頻脈,脱力などの症状を伴う症例を報告しており,また一方イタリアでは,1802年に外科医Flajaniがすでに本症についての報告をしているため,今日英米ではGraves病,イタリアではFlajani病とも呼ばれている.
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