Japanese
English
特集 癌患者の栄養問題
担癌生体の蛋白質および糖代謝異常—栄養生理の立場から
Deviation in Protein and Sugar Metabolism of Tumor-bearing Rat,from a Viewpoint of Nutritional physiology.
須田 正巳
1
1大阪大学蛋白質研究所代謝部門
pp.594-601
発行日 1966年5月20日
Published Date 1966/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203964
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
序論および蛋白代謝の項でものべたように外部から摂取する栄養によつて癌の異常増殖を阻止することはできない.担癌状態は,癌組織が生体内で増殖することに起因したhostの代謝調節の破綻であつて,hostは癌組織の代謝を支持する方向に同調させられている.糖代謝では,宿主の肝臓は,その重要な血糖維持の生理機能を減退させられ,律速酵素は,筋肉その他の糖分解をする酵素型に変化している.個体発生的にみると,この変化は,肝臓の脱分化(dedifferentiation)と考えられる.宿主側がこうむる影響の原因は,parabiosisの実験からも,まず癌組織からのhumoral factorが考えられる.今後はこれがいかなるものかに研究をすすめたい.このような考え方からすれば,癌患者には,energy源,蛋白源を十分に補給しつつ,癌組織には別個の治療対策をする以外に,少なくとも現在では方法がないと考えられる.もし幸にして将来humoral factorとその作用機序が明にされるならば,癌組織が,宿主側におよぼす代謝的変調を防止する手がかりが得られるのではないかと思う
本研究の蛋白質代謝異常に関しては,大阪大学蛋白質研究所代謝部門の石川栄治博士,医学部泌尿科三瀬徹博士,糖代謝の異常に関しては,蛋白研代謝部門の田中武彦助教授,医学部栄養学教室大学院学生,森村弘子,原納優,医学部陣内外科陶文蟯の諸君の精力的な研究によつていることを記して,感謝の言葉としたい.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.