Japanese
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外科の焦点
臨床的に胃潰瘍または胃腫瘍を疑わせる興味ある寄生虫性肉芽腫の解析と新しい課題について
On the analysis of parasitic granuloma which may be possibly suspected to be gastric ulcer or tumor clinically and a correlated new subject.
吉村 裕之
1
Hiroyuki YOSHIMURA
1
1千葉大学医学部(寄生虫学)
pp.277-283
発行日 1965年3月20日
Published Date 1965/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203551
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はじめに
消化管殊に回腸下部にみられる非特殊性限局性腸炎,腸蜂窩織炎またはクローン氏病(Crohn’disease)と呼称される疾患の発症因子の1つとして寄生虫殊に蛔虫の幼虫の局所穿入または迷入が関与する場合のあることは既に先人によつて指摘されているところである.この場合その局所所見は虫体を中心とした好酸球性の肉芽組織または同蜂窩織炎の像を呈する場合が多く従つてその発症病理学的な観点からも種々論議されてきている.
ひるがえつて胃における寄生虫迷入にもとづく類似の報告例は従来甚だまれではあるが,わが国では越家(1954),石井ら(1956),前田ら(1957),村上(1960),佐野ら(1961),内山ら(1961)および土屋ら(1963)によつていずれも胃壁内好酸球性肉芽腫の症例として報告され,これらの多くの組織切片中に寄生虫の虫体断面を思わせる異物の存在を認めている.これ等の寄生虫は多くは恐らく蛔虫であろうと推察され,時には東洋毛様線虫や蟯虫,その他動物寄生性の珍らしい線虫をも疑つてはいるがその根拠は必らずしも明確でないものが多い.もつとも原因体となる寄生虫がいかなる種類のものであるかということは直接患者の予後にはさほど重要ではないかも知れないが臨床的に胃潰瘍または胃の腫瘍を疑わさせる点に意義があると思われる.
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