Japanese
English
展望
膵癌をめぐつて—Ⅲ.Carcinomatous neuropathy
Some clinical aspects of the pancreatic carcinoma. Ⅲ. Carcinomatous neuropathies
渋沢 喜守雄
Kishuo SHIBUSAWA
pp.1161-1175
発行日 1962年11月20日
Published Date 1962/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202995
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はしがき
糖代謝障害の患者から,膵癌の好発することを前稿でうかがつたが,さて,糖尿病患者の約半数に非炎症性のpolyneuropathyが合併するように膵癌患者においても,また,idiopathic neuropa-thyがしばしば合併する.膵癌で胆道を閉塞し,胆血症を招来すれば,中枢神経症状の発現は当然である.しかし,体尾部癌で,胆道に狭塞なく,黄疸なしに,また癌巣は限局して,中枢神経系に転移・圧迫・浸潤などの直接的傷害なしに,中枢神経症状を呈することが,偶然のチャンス以上の高頻度に,見出されるのである.おそらく,その最初の記載はLhermitte(1922)であつたろう.体部癌患者が,黄疸なく,中枢神経への転移なしにアタキシー・起立不能・歩行不能などの小脳症状を呈したというのである.ついで,Lovell(1923)は体部癌の1例で,抑鬱症・不安・agitated mel-anchoria・不眠症を,すべての癌症状よりも先に訴えたのを経験し,こうした中枢神経症状を"pa-ncreatic anxiety"とよび,anxiety・agitated me-lanchoria,insomniaが主徴であつて,この症状は膵癌の発見診断に有力であると記載した.
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