特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅰ)
吻合病について
槇 哲夫
1
,
三浦 光恵
1
1東北大学医学部
pp.483-489
発行日 1962年6月20日
Published Date 1962/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407202904
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Ⅰ.まえがき
腸切除後の吻合方法として,側々吻合,端側吻合および端々吻合の何れかが行なわれるわけである.側々吻合は術式が簡単であり,縫合不全や吻合部の狭窄を伴なうことが少ないとされているが,端々吻合には起らない特殊の合併症をみる場合が多い.腸管吻合部の盲嚢形成,輸入脚吻合端の拡張と延長および空置腸管の悪循環がそれである.術後数カ月ないし数年後に腹部膨満,腹痛,悪心,嘔吐を訴え,時には貧血を伴ない,またイレウス症状や盲端部の穿孔による腹膜炎を併発し,重篤な症状を招来することがある.これらの不快な合併症は主として側々吻合または端側吻合,そしてあるいは側々吻合による腸管空置術後に発生するものである.このような合併症について,臨床的に最初に詳しく記載したのはHenschen(1936)である.彼は回腸一横行結腸吻合による短絡形成を行なつた場合,腸管悪循環Circulus vitiosusを伴ない,盲腸,上行結腸に腸内容がうつ滞して糞塊を形成し,腸管拡張による障害や,その他腸管の側々吻合による輸出入脚盲端の拡張,内容蓄積による盲嚢(Blindsack)形成による一連の障害を総称して吻合病Anastmosenkrankheitと呼んだ.最近これらについて種々反省されてきているので,自験例を中心としてその概要を記してみる.
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