Japanese
English
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手術とシヨック
Surgical Operation and Shock
澁澤 喜守雄
1
Kishuo SHIBUSAWA
1
1東京大學醫學部福田外科教室
1Surgical Dept of Tokyo. Univ.
pp.301-309
発行日 1951年7月20日
Published Date 1951/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200844
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ショックという状態は,外科侵襲に対して"無防備"か,あるいは,十分に"適應しえない"病態とも考えられる(Selye)1).個体のこうした"防備"のうすいような事情を,ふつう,ショック準備状態とよんでいる.外科臨床でとりあつかわれるシヨック準備状態では,血液または血液成分の欠乏が最もふつうである.
全血液または何れかの血液成分の欠乏は,同じ体成分の欠乏によることはいうまでもないが,まさに,シヨック準備状態であるばかりでなく,その欠乏が高度になれば,それ自体,すでにショックまたはショック樣の状態である.全血液の欠乏はすなわち一義的なショック性の過程であり,血液の何れかひとつ,または数個の成分の欠乏は,それぞれ個有の臨床症状を以て修飾されはしても,循環病態生理からいつて,ショックに近いのであろう.たとえば血清カルシウムの欠乏,ビタミンB1の欠乏,糖の欠乏など,いずれもそれぞれ著明な特異の臨床所見を呈し,それによつて蔽われてはいるが,末梢循環にはショック樣の障碍がみられるのである.最近とくに注目を浴びているカリウムの欠乏も,つぎの症例のように,あきらかにショック準備状態,あるいはショック性の循環障碍を示すのである.
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