特集 産婦人科医のための臨床薬理・2
シヨックのための薬物
渋澤 喜守雄
1
Kishuo Shibusawa
1
1王子病院
pp.729-735
発行日 1966年9月10日
Published Date 1966/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203554
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はじめに
他の多くの病的状態と同様に,シヨック治療の要諦は,それが重症低反相性にならないうちに,発生後長い時間が経過しないうちに,十分にコントロールし回復せしめる所にあるであろう。しかし,一般に,シヨックはいわゆるpoor riskの患者,処療態勢の完備しないときなどに発生しやすい。こういつた相いれない条件のために,シヨックが何をやつても回復しない低反応相に陥るのである。したがつて,シヨック低反応相を招きやすい先駆条件を克服しておくことが,シヨック治療,シヨック低反応化を防ぐひとつの重要な方法である。
すでに古くからいわれているように,貧血,脱水・低蛋白血症・アシドージスといつた類の先駆状態は,シヨック前に,シヨック発生後なら直ちに,コントロールし回復すべきであろう。アシドージス,CO2蓄積,高K血症などは既存すればもちろんだが,先駆しなくても,シヨックが一旦発生し,ある時間経過すると当然,合併するものであって,それは不整脈・心停止などの原因になりうる。シヨックの早期には冠血流量は激減はしないが,シヨックが長びけば,心筋は機能的にも形態学的にも,明らかな傷害を受ける。ことに冠動脈硬化症の既存する患者では,それが著しい。したがつて電解質の平衡異常は早く発見し早く是正すべきである。
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