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食道胃接合部癌が増えている,と感じている読者が多いことと思う.本号の疫学でもそのことが明らかにされており,特に男性に顕著であることが記述されている.欧米では,唯一増えているのが食道胃接合部癌とも言われており,今後,関心はますます高まっていくものと考える.しかしながら,いまだ解決すべき課題は沢山あり,本特集はその糸口になれば,という思いもあり企画した.食道胃接合部とは? その診断基準は? というのが,解決のための入口でありながら,まだまだ大きな問題であり,臨床の現場で治療方針決定に際して最も悩ましい点である.特にBarrettがあった場合の,食道なのか胃なのか,ということはことさら厄介であった.本号の「組織学的鑑別」では,Barrett食道に観察される病理学的所見が列挙されており,いずれかが円柱上皮内に認められれば,Barrett食道の診断がほぼ可能であると記述されている.心強い限りである.術式においても,特にリンパ節郭清に関しては統一された標準郭清がなく,食道専門医にかかると右開胸アプローチが多用され(すなわち上縦隔まで),胃専門医にかかると経裂孔的アプローチが好まれる(下縦隔まで)といった傾向が指摘されてきた.本号の内容からは,腹部における胃周囲(No. 4d, 5, 6)リンパ節の郭清は必要なさそうだということは見えてくる.しかしながら,縦隔郭清については,まだ議論がありそうである.折しも現在,日本胃癌学会,日本食道学会共同で行っている食道胃接合部癌ワーキングで診断基準や,適切な郭清範囲などが議論されている.Retrospectiveではあるが,全国規模の調査も行われており,その結果が待たれている.いずれにしても本特集が,日頃悩ましい疾患である食道胃接合部癌の診療の一助となれば望外の喜びである.
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