- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回の特集では「臓器別・消化器癌終末期の特徴とターミナルケア」というタイトルで,それぞれの専門施設からその現状を述べてもらった.臓器によってその消化器癌の終末期像に特徴があり,異なっていることがよく理解できる.癌末期の全身兆候を呈する以前に,このような臓器特有の症状を呈するということは,その特殊な病態に対して制癌療法ではない病態緩和の有効な治療がなされれば消化器癌終末期の患者さんのquality of life(QOL)はさらによくなることを意味している.終末期消化器癌の治療に多くの消化器外科系の臨床医が様々な工夫を凝らしていて,なかでも各著者らの,患者さんのQOLを少しでも改善しようという暖かな気持ちが大変よく表れている内容である.
現在,QOLの定量的客観的評価としてしばしば用いられてきているSF-36や,さらにEuro QolやEQ-5Dなどを用いての消化器癌終末期患者さんの管理の評価を行っていく解析が今後必要であろう.進行した消化器癌に対して有効な抗癌剤および分子標的薬の登場によってボーダーライン症例が切除可能に転換したり,切除後もこれらの補助療法効果によって患者さんの予後は確実に延長してきている.これらmulti-modalityの治療方法による患者さんの生存期間への影響を,費用対効果を含めて分析することが可能な,定量化したQOL指標を用いて解析することが今後ますます要求されてくるであろう.
このような客観的・定量的な評価方法が確立されてくれば,外科手術方法の意義もまたQOLの観点からあらためて検証されてくるようになるであろう.良性疾患に対しての外科治療は当然のことであるが,特に予後不良な難治癌を扱う領域の外科切除療法の意義についても重要な評価方法になっていく.患者さんにとっての最善の治療方法を選択させるためには,その判断に必要な情報をいかにわかりやすく客観的に呈示していけるかは大変重要なポイントである.高度な技術に支えられる先進的な外科治療も,よいチームの支えなくしてはその臨床的価値を十分に発揮して患者さんに役立ち得ないであろう.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.