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あとがき
宮崎 勝
pp.1220
発行日 2012年9月20日
Published Date 2012/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104243
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わが国においては近年,高齢者人口の増加が著しく,5年以内には人口の4人に1人以上を65歳以上の高齢者が占めることになると予想される.そのため,外科治療を要する多くの患者さんにおいても高齢者の比率はさらに高まると想像される.最近の高齢者は以前に比べて体力的に頑丈になっており,臓器機能も維持しているとはいえ,やはり様々な加齢性の変化を伴ってきているのは間違いない.
老年医学はgerontologyやgeriatricsといった概念で新たな学問分野がすでに確立されつつあり,多くの知見がこれまで明らかにされてきている.しかし,老年外科学の研究は実地臨床においてはまだ始まったばかりであり,その学問的な深さは十分ではない.加齢に伴う精神機能,生理学的生化学的臓器機能など,きわめて多岐な変化が一つの体に表れており,それが実地臨床では患者各人ごとにその加齢に伴った機能障害程度の差異が異なっているため,複合的な機能評価を行ったうえでの詳細な周術期管理が必要となるのは当然である.したがって,外科医が自分自身の専門領域の知識のみで高齢者の周術期管理を行っていくことはまず不可能であり,危険でもある.十分な全身管理を行いえるだけの知識・経験を持ったうえで専門的な手術を施行していくようにしなければならない.その意味では,現在,要求されている「全身を診られる医師」に必要な要素をしっかり普段から身に付けておくことが今後,外科医として仕事をしていくうえではより強く求められる時代になっている.
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