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消化器癌に対する癌化学療法は,癌の外科切除にあたる外科医にとって,20~30年余り以前においては血液系および婦人科系などの癌種に対するものと比較してその効果をそれほどに期待していなかった,というのが当時の率直な実感であったであろう.しかしながら癌化学療法を専門として研究を続けてこられた消化器系の多くの方々の努力の結果,また新たな有効な新薬の登場によって消化器系の癌腫にもきわめて高い効果が示されるようになり,その効果が多くの現場の臨床医にも実感できるほどになってきたのが現状である.一方で,わが国の消化器外科の手術レベルは国際的にトップレベルに達しており,その手術技術が日々さらに進化しているのは疑いのないところである.このような状況のなかで,特に進行癌に対して化学療法と外科切除療法を双方で競い合わせその治療成績を向上させるのも有益な方向性ではあるが,当然ながら未だ外科切除が多くの消化器癌治療においては根治性が得られる唯一の治療方法であることを忘れず,進歩する消化器癌の化学療法を外科切除療法の成績向上のためにうまく利用していくことが重要であろうと思われる.上手な組み合わせを検討することにより外科切除後の成績を向上させられるばかりではなく,外科切除適応の拡大にも展開することが可能になってきている.これからは,消化器外科医の治療戦略においてもこのように進化する癌化学療法の効果をいかに巧く外科切除にhybridさせられるかが成績向上の鍵となるように思われる.
本号では,様々な消化器癌におけるそうした新たな取り組みの成果について,各領域でのhigh-volume施設で積極的展開を実施している方々から新規性の高い貴重なデータを報告していただけた.読者の方々も,本特集からこれからの消化器癌治療における新たな外科の役割を興味深く読みとっていただけるものと確信している.
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