--------------------
あとがき
宮崎 勝
pp.880
発行日 2013年7月20日
Published Date 2013/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104666
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回の特集は「NOTSS―外科医に問われる手技以外のスキル」ということで,様々な観点から指導医の立場の外科医にご寄稿いただいた.外科手術を通して患者に医療を提供する使命をもっている外科医師にとって,手術手技の修練は当然のことであり重要なことである点には誰もがまったく異論がないであろう.またその手術手技が卓越していればいるほど望ましいことも間違いのない点である.
しかし,問題は外科手術手技の習得のみに没頭し,それがよい外科医になりうるすべての要素であるかのように誤解している若い医師をときどき見かけてしまうような気が最近するのである.外科医が患者に対してメスを入れ,外科的外傷を負わせることができるのは,その背景に患者を含めた社会の衆目からみて外科医が様々な意味で信頼されてこそのはずである.手術手技や患者の病態のみならず患者自身の希望・意志に基づく手術の適応,周術期に起こりうる様々なイベントや術後の問題点などに対し,患者およびその家族の立場になって考えることは決して簡単なことではなく,しっかりとしたコミュニケーションのもとで初めて成り立つ.外来で初めて患者と会ったときからの付き合い方,話し方によって構築されてくるものと思われる.このためには患者およびその家族の心持ちに対しての深くて暖かな洞察が必要である.患者を含めて彼らが望んでいることを真に理解していくこと,また手術によってもたらされる結果がどのようなものであるのかをきちんと可能な限り理解してもらおうとする姿勢が最も重要に思える.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.