Japanese
English
臨床報告
Direct Kugel Patch®を用いて鼠径法で修復した大腿ヘルニア嵌頓の1例
Incarcerated femoral hernia repair in an anterior approach using a modified Kugel patch:a case report
大谷 裕
1
,
岡 伸一
1
,
倉吉 和夫
1
,
河野 菊弘
1
,
吉岡 宏
1
,
金山 博友
1
Yuu OHTANI
1
1松江市立病院消化器外科
キーワード:
大腿ヘルニア
,
鼠径法
,
Direct Kugel Patch®
Keyword:
大腿ヘルニア
,
鼠径法
,
Direct Kugel Patch®
pp.729-733
発行日 2010年5月20日
Published Date 2010/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103070
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要旨:患者は83歳,女性.2008年9月に急性腹症で近医から紹介され,当院の消化器内科に入院した.保存的治療が行われたが腹部症状は改善しなかった.入院から5日目に大量に嘔吐し,イレウスの診断で当科を紹介された.
左鼠径部に示指頭大の皮下腫瘤を触知し,超音波検査で左大腿ヘルニア嵌頓と診断して緊急手術を施行した.全身麻酔下に鼠径法でアプローチして鼠径管を開放したのち,鼠径靱帯の尾側を明らかにして大腿管に陥入したヘルニア囊を確認した.そして裂孔靱帯を頭側から開大させ,ヘルニア囊を還納させた.ヘルニア内容は小腸の一部であり,Richter型の嵌頓をきたしていたが,穿孔には至っておらず温存することとした.腹膜前腔の十分な剝離を行い,prosthesis〔Direct Kugel Patch®(M)〕を挿入してmyopectineal orificeを十分にカバーした.
同術式は基本的に鼠径部に発生するすべてのタイプのヘルニア症例に応用することが可能であり,必要時には同一創から嵌頓臓器に対する処置を行うこともできる.大腿ヘルニアに対する手術術式は諸家により様々なものが報告されているが,治療の大原則はヘルニアの発生部位になるべく近い部分で修復あるいは閉鎖を行うことであり,この観点から大腿ヘルニアに対する手術術式として鼠径法は大変理に適った術式であると考える.また,何らかのprosthesisを用いた術式は簡便に確実なヘルニア修復が可能と考える.大腿ヘルニア修復術に対する私見も含めて,今回経験した症例について報告する.
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