特集 手術とFunctional Anatomy
Ⅵ.卵巣の手術
楔状切除術
塗 百寛
1
,
中村 幸雄
1
,
飯塚 理八
1
Hyakkan To
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.892-893
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205945
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Ⅰ.適応
卵巣楔状切除術の適応は多嚢胞性卵巣(PCO)にあることはいうまでもない。われわれはほかに不妊要因がなく,付表に示すごとき,診断基準をみたす症例を楔状切除術の適応としている。LH前値が20mIU/ml以上でLH-RHに対し良好な反応を示すグループⅠであれば,ほぼ90%の術後排卵率が期待される。これに反して,前値が20mIU/ml以下のグループⅡ症例は手術効果不良で,その卵巣所見は小さく,硬い硬化型多嚢胞性卵巣が多い。
多嚢胞性に腫大した卵胞を尖刃の先で穿刺しておくだけで,楔状切除術を行なわなくても,術後排卵効果があるということが多く報告されている。さらに,卵巣楔状切除術によって卵巣性アンドロゲンおよびエストロゲンの分泌の減少を示すにもかかわらず,術後排卵例においても,無排卵例においても,これに伴って間脳—下垂体—卵巣系の機能的な変化はないというわれわれの成績から,術後の排卵機序は単に肥厚した白膜が切開,排除されるので,物理的に排卵が起こりやすくなるのだと考えられ,"Locus minoris resistentiae"説を提唱した。しかし楔状切除術後の排卵は永続するものではなく,白膜が修復され,再度肥厚になると,無月経と無排卵が再発する例もあるので,術後なるべく早く妊娠させるのが肝心である。
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