昨日の患者
妻をよろしく
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1155
発行日 2009年8月20日
Published Date 2009/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102674
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- 文献概要
人は死を悟ったとき,何を考え,そして何を願うであろうか.最期まで自己の夢を追い求める人,仕事をし残して悔やむ人,残された家族の幸せを願う人…….人それぞれ思いは異なるが,そこには逝く人の人柄が現れる.
60歳代後半のSさんから手紙をいただいた.「自分は仕事一筋で,子供の育児や教育はすべて妻に任せきりでした.さらに,老いた両親の世話も妻に大変お世話になりました.定年となり,やっと罪滅ぼしができると思っていた矢先,不治の病となりました.2人の子供にはそれぞれ伴侶がおり,何も心配はしていません.しかし,妻は生来病弱であり,これからの人生を平穏に過ごせるか心残りです.妻を残して先に逝くことが残念で悔やまれます」と,心情が切々と綴られていた.そして最後に「妻をよろしく」と書き添えられていた.
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