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ゴールデンウィーク前の4月28日にWHOでphase 4と判定され,新型インフルエンザと認定された豚インフルエンザ(A/H1N1)は,2日後の30日にはphase 5に格上げされた.そして,メキシコ,アメリカ,カナダを中心に感染患者は増加し,その後,成田空港での日本人感染者の確認(5月9日),神戸市(5月16日)や大阪府での感染者の国内発生と続いた.当初は強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1)を想定しての対策だったが,幸いなことに今回の新型インフルエンザ(A/H1N1)は弱毒性で,感染性も弱いということが分かってきた.したがって,季節性のインフルエンザと同等の扱いでよいとの意見もあり,厚労省もだいぶ緩和した対策に変更しつつあり,地域の実情に応じて柔軟な対応を行っていく方針を示している.
6月4日には厚労省は,国内で最も早く発症したのは神戸市の男子高校生の5月5日だったことを発表した.この高校生に渡航歴はなく,成田空港の検疫で「国内初」の感染者が確認される5月9日の4日前,神戸市で確認された5月16日の11日前のことである.すなわち,「国内初」の感染者が確認される5月9日以前より国内での感染が広がっていたことを裏付けている.もしそうなら,空港での水際阻止政策や濃厚接触者の10日間の停留措置は何だったのかということになる.6月4日現在の新型インフルエンザの世界の累計患者数は2万1,077人となり,死亡者は124人で死亡率は約0.59%となる.日本での感染者は6月10日現在497人で,死亡者はいない.しかしながら,これから冬に向かう南半球のオーストラリアでは感染者が増加しているという.そのためWHOは6月12日にphase 6と格上げを行った.厚労省は今年度内に2,500万人分の新型インフルエンザ用ワクチンを製造する方針と発表した.これら新型インフルエンザの影響で,多くの修学旅行や観光旅行が中止され,それに関連して旅行業への打撃をはじめとした経済情勢の悪化も問題視されている.日本を含めた北半球では感染拡大が一時収束したとしても,冬場にかけての第2波,第3波がどうなるのかは未知である.強毒性のウイルスに変異しないことを祈りたい.
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