Japanese
English
特集 炎症性腸疾患外科治療のcontroversy
〔潰瘍性大腸炎に対する最適な外科治療とは?〕
標準術式として肛門管内直腸粘膜抜去は必要か
必要でないとする立場から
Reconstruction of proctocolectomy:stapled IPAA is the standard surgical procedure with ulcerative colitis
板橋 道朗
1
,
橋本 拓造
1
,
番場 嘉子
1
,
廣澤 知一郎
1
,
小川 真平
1
,
亀岡 信悟
1
Michio ITABASHI
1
1東京女子医科大学第2外科
キーワード:
回腸囊肛門管吻合(IACA)
,
回腸囊肛門吻合(IAA)
,
肛門機能
,
癌化
,
dysplasia
Keyword:
回腸囊肛門管吻合(IACA)
,
回腸囊肛門吻合(IAA)
,
肛門機能
,
癌化
,
dysplasia
pp.601-605
発行日 2009年5月20日
Published Date 2009/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102555
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要旨:回腸囊肛門管吻合(ileo-anal canal anastomosis:IACA)の最も大きな特徴は,直腸のanal transitional zone(ATZ)を温存して疾患のコントロールをしつつ,排便機能が良好に保たれることである.器械吻合であるため吻合の手技は術者の技術による部分が比較的小さく,安定した吻合が可能である.当科で経験した潰瘍性大腸炎手術症例で自然肛門温存手術は92.8%の症例に行われていた.直腸粘膜抜去を行わないIACAを標準手術として,癌化あるいは下部直腸にdysplasiaを認める症例では回腸囊肛門吻合(ileo-anal anastomosis:IAA)を選択している.手術時間はIACAで平均255分,IAAでは345分であった.術後合併症や術後排便回数に差は認めないが,失禁はIACAがIAAに比べて有意に良好である.IAAでの粘膜抜去は必ずしも完全なわけではなく,粘膜遺残が認められることがある.IACAでは残存直腸粘膜からの癌やdysplasiaの発生に注意が必要となるが,癌やdysplasiaが発生する頻度は低率である.IACAは,疾患のコントロールを行いつつ排便機能が良好に保たれる術式であり,多くの症例で適応とすることが可能である.高齢者や肛門機能が十分でない症例では,あえて肛門機能の温存に有利なIACAのみでなく永久人工肛門である大腸全摘術(total proctocolectomy)を選択したり,総合的に手術のリスクや術後のquality of life(QOL)を考慮して術式を決定すべきである.
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