カラーグラフ 診療に役立つ肉眼像と組織像の理解―マクロからミクロ像を読む・10
膵:良性疾患
平野 聡
1
,
近藤 哲
1
Satoshi HIRANO
1
1北海道大学大学院医学研究科腫瘍外科学分野
pp.1294-1302
発行日 2006年10月20日
Published Date 2006/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100969
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
近年の光学診療機器の発達に伴い,管腔臓器疾患に対する肉眼診断能の向上は著しいものがある.一方,実質臓器である膵臓においては,病変の切除前にその肉眼像を捉えることは膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary-mucinous neoplasm:IPMN)など一部の主膵管病変を除いて困難である.すなわち,膵疾患においては,ほかの実質臓器疾患と同様にUS,CT,MRIなどの間接的な情報から病変の形態や組織の良・悪性を診断しなくてはならない.最近では高度の空間・時間分解能を有するmultidetector CT(MD-CT)による多断面情報や,超音波内視鏡(以下,EUS)・管腔内超音波検査(以下,IDUS)などの病変に極近接して得られる詳細な画像情報を総合することにより,各種の病変の立体構築やおおまかな組織学的構成要素までを把握することができるようになった.病変の典型的な組織学的所見の理解は,その画像情報を読み解くうえできわめて重要であり,正確な診断に至るための必須事項であると考えられる.
本稿では,adenoma-carcinoma sequenceが認められているIPMNや,悪性化のpotentialを有することが知られている粘液囊胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN),さらに悪性例の頻度が比較的高い膵内分泌腫瘍を除外したうえで,良性疾患としてまとめた.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.