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特集 良性腫瘍
膵の良性腫瘍
Benign tumors of the pancreas
土屋 凉一
1
Ryoichi TSUCHIYA
1
1京都大学医学部外科
pp.1107-1112
発行日 1969年8月20日
Published Date 1969/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204918
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はじめに
一般に膵の良性腫瘍は,比較的稀なものである.この中,島細胞腺腫が一番発生頻度が多いが,その中でもhyperinsulinismや,消化性潰瘍,あるいは下痢を合併するホルモン産出性の活動性腫瘍は,その臨床症状の特異性によつて近時注目され,治験例も増加している.一方,島細胞腺腫でホルモン非産出性の非活動性腫瘍も発生するが,大いさも小さく,臨床症状を呈することも少なく,剖検でたまたま発見されるということが多く,臨床的にはあまり重要でない,島細胞腺腫についで多いのは,嚢胞腺腫であり,他に脂肪腫,線維腫,線維腺腫,筋腫,粘液腫,軟骨腫,血管内皮腫,神経鞘腫,リンパ管腫などの間葉組織起源の良性腫瘍や,充実性腺腫があるが,いずれもはなはだ稀なものであり,臨床的にも相当大きく発育しないと発見され難い.
さて,日常の外科診療に際して,膵癌との鑑別に最も困難を感ずる疾患は慢性膵炎である.慢性膵炎は勿論良性腫瘍ではないけれども,上述の良性腫瘍と膵癌の鑑別よりもむしろ重要である.膵癌と膵嚢胞の鑑別も困難なことがあり,また,膵嚢胞の中で良性と悪性との間に鑑別困難なことがある.
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