Japanese
English
特集 脳腫瘍と遺伝子異常
5.未知のグリオーマ腫瘍抑制遺伝子
A Puzzle with More Pieces?: Entering an Era with a Handful of Glioma Suppressor Genes
植木 敬介
1
Keisuke Ueki
1
1東京大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
キーワード:
glioma
,
tumor suppressor gene
,
oncogene
,
loss of heterozygosity
,
cloning
Keyword:
glioma
,
tumor suppressor gene
,
oncogene
,
loss of heterozygosity
,
cloning
pp.539-546
発行日 1998年6月1日
Published Date 1998/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901297
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はじめに
グリオーマに限らず,すべての腫瘍は正常細胞から発生する。かつては,形態学上の変化,あるいは生物学的挙動の変化としてしか捉えられなかったこの腫瘍化の過程が,過去10年間の分子遺伝学,分子生物学の進歩によって,一連の遺伝子異常の集積によってもたらされることが次第に明らかにされつつある。John's Hopkins大学のVogelsteinら34)のグループは,正常細胞が腫瘍化し,さらに徐々に悪性化していく過程を,二つの重要な概念,"Clonal expansion(単一クローンの拡張)"と,"Stepwise carcinogenesis(段階的癌化)"によって,明快に説明している。そして,大腸癌をモデルとして,発癌に関与する遺伝子を次々に同定し,遺伝子異常の集積による発癌のメカニズムを解明しつつある14,39)。グリオーマの形成過程も,同様にこの二つの概念に沿って理解されるようになり,様々な遺伝子異常が,いつの段階で,どのような機構で寄与しているのかの解明が進められている19,20)。この総説では,まずこれらの概念を簡単に説明した上で,グリオーマの形成に関わる腫瘍抑制遺伝子についての現時点での知見を総括してみたい。
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