Japanese
English
総説
悪性脳腫瘍の遺伝子診断—遺伝子解析の臨床応用へ向けての現況
Molecular Genetic Analysis in the Clinical Neuro-Oncology
植木 敬介
1
Keisuke Ueki
1
1東京大学医学部脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, The Unlversity of Tokyo
キーワード:
glioma
,
loss of heterozygosity
,
SSCP
,
gene amplification
,
oligodendroglioma
,
chromosome 1
,
chemotherapy
Keyword:
glioma
,
loss of heterozygosity
,
SSCP
,
gene amplification
,
oligodendroglioma
,
chromosome 1
,
chemotherapy
pp.41-49
発行日 2001年1月1日
Published Date 2001/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901708
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はじめに
悪性脳腫瘍においては,画像にて検出される腫瘍が小さくてもほとんどの場合手術による治癒は不可能であり,また,他臓器への転移を起こすことも通常はない。したがって,予後を決定する最も重要な因子は,放射線治療と化学療法を中心とする手術以外の治療に対する反応性や,再発までに要する時間など,脳内に残った腫瘍細胞の持つ生物学的性質であるということができる。一方,最近20年間の分子生物学,分子遺伝学の進歩と,その知識の癌研究への応用によって,悪性腫瘍とは実は遺伝子の異常によっておこる病気であるということが明らかになってきた。すなわち,母体となる正常細胞に様々な原因で遺伝子の異常が発生し,それが細胞の異常な分裂,増殖,浸潤,転移など,腫瘍としての様々な性質を与えていくと理解されるようになってきたわけである。悪性腫瘍になるためには,一つだけではなく,いくつもの遺伝子異常が重なる必要があるという多段階発癌説が現在の共通認識であり,実際に腫瘍は様々な遺伝子異常を示している1,2)。理論的には,そうした様々な遺伝子異常のパターンによって腫瘍細胞の様々な生物学的特性を予測することが可能なはずであり,それが遺伝子診断の根拠であると考えてよいと思う。
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