Japanese
English
特集 グリオーマの生物学
Glioma発癌の分子機構
Molecular Mechanisms of Astrocytoma Tumorigenesis-Link between Genotypic Abnormalities and Phenotypic Abnormalities
多田 光宏
1
,
松本 亮司
1
,
長嶋 和郎
2
Mitsuhiro Tada
1
,
Ryoji Matsumoto
1
,
Kazuo Nagashima
2
1北海道大学医学部脳神経外科
2北海道大学医学部第二病理学講座
1Department of Neurosurgery, Hokkaido University School of Medicine
2Department of Pathology II, Hokkaido University School of Medicine
キーワード:
astrocytoma
,
glioma
,
tumor suppressor gene
,
gene expression
,
oncogene
Keyword:
astrocytoma
,
glioma
,
tumor suppressor gene
,
gene expression
,
oncogene
pp.228-238
発行日 1997年3月1日
Published Date 1997/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901077
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はじめに
Astrocyte系腫瘍であるhigh grade astrocytoma(anaplastic astrocytoma,glioblastoma multiforme;以下gliomaと略)は腫瘍としての無抑制な増殖という特質以外にも,極めて多彩な生物学的特性=形質phenotypesを持っている。様々な成長因子・サイトカインの産生,血管増生,強い浸潤性性格,放射線・化学療法剤耐性,宿主免疫抑制などである。これら多くの形質はそれぞれ対応する遺伝子の発現レベルによって規定されているが,glioma細胞においてこれら多くの遺伝子一つ一つ全てに変異などの異常があるわけではない。Glioma発癌の原因として起こる遺伝子そのものの異常はせいぜい数個であり,したがって多くの形質はこれら数個の遺伝子異常により二次的に,あるいは複数の二次的形質がさらに影響を及ぼしあうことにより造りあげられていると考えるのが妥当である。最近,gliomaに起こっているいくつかの遺伝子異常が同定され,またそれら遺伝子の機能も詳細に明らかにされつつあり,遺伝子異常が形質の異常に結びつく経路がおぼろげながら見えつつある。本稿ではこのような互いに連鎖する異常遺伝子と異常形質の総体としてのgliomaの病態像を解説する。なお,本稿で使われる略号については次頁の脚注を参照されたい。
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