頸椎症性脊髄症の神経病理学的検討

Neuropathology of Cervical Spondylotic Myelopathy

I．はじめに

　頸椎症性脊髄症は，頸椎の変形症性変化のため脊髄が圧迫されることにより起こる。その臨床像は多彩であるが^19），服部ら^9）は臨床症状からみた病変の部位と広がりを，I．灰白質と，ときに後索の腹側に障害を認めるもの，II．Iに錐体路障害が加わったもの，III．IIにさらに脊髄視床路障害が加わったものの3つの病型に分類し，本症はI型→II型→III型と移行することを推測している。

　これまで，いくつかの本症剖検例の報告がなされてきた^{1,11,13,16,18）}。しかし，脊髄の病変の性状ならびにその進行機序については未だ明らかにされていない点が多い。そこで，本稿ではまず筆者ら自身が経験した頸椎症性脊髄症7剖検例の所見を述べたうえで，過去の剖検報告例も参考にしつつ，脊髄内病変の進行パターンとpathomechanismを考察する。