学会印象記
第9回神経研国際シンポジウム—神経心理学の新しい展開
杉下 守弘
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1東京大学医学部音声言語医学研究施設,言語神経科学部門
pp.486
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900637
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第9回神経研国際シンポジウムは「神経心理学の新しい展開」といいう題で平成5年11月24日,25日の両日に行われました。今回のシンポジウムは招待演者18名,公募のポスター発表14題,参加者219名余で行われました。
今回のシンポジウムの基本構想は最近の神経心理学の潮流にあわせ,この領域の未来を思い描くことを目的としたものです。神経心理学は脳と心の関連を究明する学問領域で,この領域の研究方法として従来最もよく用いられてきたのは大脳損傷患者を対象とした臨床解剖学的方法です。大脳の特定の一部分が損傷されますと,失語,失行,失認,言語障害,感情障害などいろいろな高次神経機能の障害をおこします。これらの臨床症状が大脳のどの部分の損傷で生ずるのかを知るため,患者の死亡後の解剖所見を検討して,臨床症状と剖検所見を対応付けるのが臨床解剖学的方法です。こうした方法に加えて近年では,臨床解剖学的方法以外にいろいろな研究方法が登場して,1960年代に始まるコンピューター断層撮影法や1980年からの磁気共鳴画像法(MRI)によって,死後の解剖を待たずに大脳損傷部位を明らかにできるようになりました。また,1980年代に始まる陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography,略称PET)は,脳の血流,代謝を測定することが可能であります。
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