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特集 感覚神経路の多重性
聴覚系の多重性—外側毛帯下丘求心線維系の解析
Multiplicity of the Auditory Pathways:Organization of Lateral Lemniscal Fibers Converging onto the Inferior Colliculus
工藤 基
1
Motoi Kudo
1
1金沢大学医学部解剖学第三講座
1Department of Anatomy, School of Medicine, Kanazawa University
pp.835-844
発行日 1986年9月1日
Published Date 1986/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205769
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はじめに
従来聴覚系では,視覚系における「膝状体—非膝状体」系,あるいは体性感覚系における「内側毛帯—非内側毛帯」系に相当するような中枢内での平行上行路系のはっきりした機能構造上の2大分化はなく,系としては単一な上行投射路を形成していると考えられてきた。最近の神経解剖学の進歩は神経生理学の進歩とあいまって,この10年間に,特にネコの聴覚中枢の構成に関して多くの新しい知見をもたらし,聴覚系にも複数の上行路系が存在することを明らかにしてきた。しかし同時に,それら聴覚伝導路の構成は視覚系や体性感覚系でみられる平行路の構成とは異質なものであることもあきらかになってきた。
聴覚中枢の構成の特徴を列挙すれば,①蝸牛神経核にはじまって大脳皮質聴覚野に至るまでのシナプス数が経路によって不定であること,②交叉性上行路,非交叉性上行路,両側性上行路のいずれの投射様式も存在し,それは各々の聴覚中継核で異なっている,③下丘下の複数の平行上行路はほとんどすべて下丘中心核に収斂投射して終り(注1),下丘上で再び拡散投射して複数の平行上行路となること29,30,33,35),④音響周波数の中枢内再現(tonotopical representation)が機能構造的に明白であるのに対し,音響空間の中枢内再現(auditory spacerepresentation)は明白でない(又はよく解明されていない)こと等である。本稿では下丘下聴覚中枢諸核間の線維連絡と下丘求心線維系の解析を中心に最近の新しい所見と考え方を述べたい。
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