Japanese
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特集 感覚神経路の多重性
体性感覚系の多重性神経路
Parallel Pathways in the Somatosensory System
伊藤 和夫
1
Kazuo Itoh
1
1京都大学医学部解剖学第一講座
1Department of Anatomy (1st Division), Faculty of Medicine, Kyoto University
pp.819-834
発行日 1986年9月1日
Published Date 1986/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205768
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はじめに
Parallel sensory pathwayをreceptor specific chan-nelの機構として捉えた場合,この作業仮説は体性感覚系では古くから提起されていたように思われる。脊髄視床路と後索核—内側毛帯系に,その基本的な姿を見ることができ,この2経路に見られるreceptor specificchannelの構成様式は視覚系における"膝状体系"と"非膝状体系"の概念確立に大いに貢献したと考えられる127)。しかし,近年の研究の進展で新知見が集積され,末梢に広い受容野を持つニューロンが後索核でも見つけられ,また,脊髄と後索核からの上行性線維の終止部位に重なりが認められるなど,体性感覚系を単純に,脊髄視床路と後索核—内側毛帯系の2系統に分ける図式に矛盾が生じてきた。
体性感覚系では,受容器と中枢内経路の対応関係が視覚系のW,X,Yシステムほど,解析が進んでいないので,現時点でreceptor specific channelの観点から体性感覚系神経路の多重性を記載するには,仮定を前提にした要素が多すぎる。また,parallel somatosensory path—wayの構成概念をある程度"理論的"に記述したDykesの秀れた総説もあり49),ここでは,研究法の進歩による新知見の出現で既成概念が大きく変わりつつある中脳を中心とする皮質下体性感覚系を重点的に記述し,体性感覚系の多重性神経回路を概観してみたい。なお,紙数の都合で三叉神経感覚核に関連する記載は省きたい。
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