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編集後記
中西 孝雄
pp.712
発行日 1986年7月1日
Published Date 1986/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205750
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- 文献概要
「脳と神経」38巻7号をお届けします。本号には,総説「神経系奇形」と多くの専門領域から投稿,採択された素晴しい原著論文11篇が掲載されております。
近年,ハードウェアの急速な発展に伴い,嘗ては予想もしえなかった宇宙旅行が可能となり,テレビから自然色に近い画像を見ながら様々な情報を得ることができるようになりました。また,わが国においては,GNPの上昇に伴い,自然環境もどんどん変化しております。道路が整備され,乗用車が増え,全国的に航空路が開かれ,日常生活も気楽に過せるようになりました。しかし,世の中がこのように発展しているにかかわらず,それらを開発したヒト自身の大脳機能は,いまだほとんど解明されておりません。意識,睡眠,記憶,言語,運動などの生理的機能や痴呆,不随意運動,失語,失行などの発現機序に関しては,いまだ正確な知見が得られていないのが現状であります。動物と異なり,自然環境社会環境などをどんどん発展せしめたヒトの大脳機能がすぐれていることは申すまでもありませんが,人類が幸せに暮すためには,個々のヒトの大脳機能を解明しておくことが是非必要であります。とくに高齢化社会となり,痴呆患者が増加している現在では,今後のことをも考慮して,大脳機能解明のために研究を推進しなければなりません。
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