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編集後記
中西 孝雄
pp.1336
発行日 1977年12月1日
Published Date 1977/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204176
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- 文献概要
神経系の構成単位はニューロンであり,ニューロンとニューロンとの接合部はシナプスと呼ばれている。シナプスにおけるインパルスの伝達様式は,古くから神経生理学の興味ある研究対象となつており,それに関しては,輝かしい多くの研究成果が発表されている。一方,近年電子顕微鏡が発達するに伴ない,シナプスの微細構造が明らかとなり,病理学的にも各種疾患におけるシナプスの変化が注目を浴びるようになつた。そこにおけるインパルスの伝達は,温血動物の場合,ほとんどが化学伝達物質によって行われていることが知られており,その物質の正体が,電気生理学的に,電子顕微鏡学的に,あるいは生化学的に,あらゆる研究方法を駆使して追究されているが,実際に化学伝達物質として固定されたものは,今迄に僅かしか知られていない。神経筋接合部におけるアセチルコリンと抑制性の伝達物質として知られているガンマアミノ酪酸(GABA)ぐらいのものである。候補として,ドーパミンやSubstance Pなどが挙げられているが未だ確定的なものとはなつていない。
他方,近年神経学以外の領域で,ホルモンや薬剤に対するレセプター(Receptor)の存在が明らかになり,その性状を分析する技術が開発されるに伴ない,レセプター自身の病気が発見され,治療の面でも画期的な方法が開発されている。乳癌のエストロゲンレセプターの分析により,その治療法を選択することなどはそのよい例である。また循環器疾患や気管支ぜんそくの病因や治療の面で,レセプターの知識が大いに役立つている。
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