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本号には原著論文の他に総説として「神経言語学」がとりあげられている。言語は,人間の場合,日常生活上絶対に必要なことであるが,健康な人は言語のことを敢えて考慮する必要はなく,日常生活上何の問題なく過すことができるが,高齢化社会になるに伴い,健忘者とか痴呆患者などが増え,大脳障害に伴い失語症が発症するため,言語についてはその発現機序を明らかにしておく必要がある。そのためには,まず大脳の障害部位と失語症との関連を明確にしておかなければならないが,その機序はいまだ完全には解明されていない状態である。機序究明のためには,当然,臨床症状と関連する大脳の障害部位が病理学的に明らかにされ,生理学的に言語の発現機序が究明されれば,形而下の面で機序が明確になるが,いまだ究明されていないため,形而上面から心理学的にも究明する必要がある。したがって現時点では,言語に関連する各専門領域からの意見を聴取し,発現機序を詳細に検討しなければならない状態である。したがって,本号にとりあげられた総説は読者に大いに役立つことになるであろう。
なお,本号には多くの研究領域から11編の素晴らしい原著論文が投稿,掲載されている。今や戦後40年余りを経過し,わが国が豊かな時代となったため,若い多くの医学者によって研究が活発に進められ,業績が急速に進展し,学会機関誌以外の雑誌にも多くの論文が投稿されているが,満40年という長期にわたり出版されている本誌には数多くの立派な論文が投稿,掲載され,多くの論文が博士論文として提出されたり,業績論文として報告されたりしている。このことは,本誌が高級な学術雑誌として実証されていることを示していると言えるであろう。本誌編集委員の一人として,そのことを大変有難く感じている。
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