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編集後記
中西 孝雄
pp.353
発行日 1977年3月1日
Published Date 1977/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204045
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- 文献概要
N.H.Kの日曜連続テレビドラマ「花神」に出てくる幕末の先覚者,吉田寅次郎はわらじ掛けで全国を駆け巡り,長時間かけてようやく情報を集め,蘭学医村田蔵六は1冊の洋書を見せてもらいにわざわざ岡山まで出掛け,それを模写して医学を勉強している。わずか100年前のことであるが,昔の人が"知る"ために如何に苦労したかがよくわかる。科学は加速度的に進歩すると言われるが,情報も科学の進歩に伴って増大し,現代では居ながらにして,日本国中のことは勿論,世界中のあらゆる国の出来事を,またたく間にラジオ,テレビを通じて知ることができるし,学問上の新知見を,おびただしい数の報道機関を通じて容易に収集することもできる。このことは神経学の領域においてもまた例外ではない。むしろ情報が多過ぎるきらいがある。
本誌は毎号約10編の原著論文を掲載し,そのために木誌の約8割のスペースをさいているが,幸い輝かしい伝統に支えられ,本誌の論文が他誌に引用されることが多く,また立派な原著論文が増々多く投稿されている。そのため原稿を受付けてから掲載するまでにかなりの日月を要しているが,いかに情報過多の時代とはいえ,真に学問の進歩のため,読者に益することが多いと考えられる論文はどしどし掲載されている。ただしかし,査読に際して修正を求めたくなることがしばしばある。以下気付いた二,三のことがらについて述べてみたい。
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