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◆錐体路障害による下肢の運動麻痺に伴って,下肢三重屈曲現象のみられることがある。下肢に加えられた刺激によって,股関節,膝関節,足関節(背屈)が三重に屈曲するものであるが,脊髄が本来持っている反射機構が錐体路の障害のため上位よりの抑制から解放されて,反射が顕現化したもので,脊髄自動反射の名で呼ばれる。この全般的概説は拙著にゆずるが(『神経症候学』pp 557−562),最近表わした知見補遺(神経進歩26(4):1763-772,1982)の中から問題点を二,三指摘してみたい。
◆下肢の三重屈曲現象そのものには強弱があり,我々はこれを次の3つに分けている。(1)最も弱い場合には,下肢の三重屈曲自体は軽微で,下肢の屈筋群の急速なピクとした筋収縮のため,下肢がブルブルとふるえるように動くものである。我我はこれをミオクローヌス様痙攣(myoclonic twitch)または,痙攣様三重屈曲(twitched triple flexion)と呼んでいる。この中でも最も軽いのは,内側大腿屈筋(medial ham—string)の収縮のみみられるものである。(2)次に強いのは,明らかな下肢三重屈曲を呈するものであるが,刺激によって生じる下肢の屈曲運動は速く,下肢が動いたために刺激が自然に中断されると,下肢は直ちに元の伸展位に戻るものである。これを我々は相性三重屈曲(phasictriple flexion)と称している。(3)屈曲現象の最も強いものは,刺激によって下肢は力強くギュッと屈曲し,刺激が中断されても筋収縮が持続し,暫時,その姿勢をとった後,元の伸展位に戻るもので,刺激を中止しても直ぐには元に戻らない。我我はこれを緊張性三重屈曲(tonictriple flexion)と呼んでいる。
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