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新年号をおとどけする。本号は特集として自律神経系を解剖・発生,生理,薬理,体性神経系との関連の面からとりあげた。この10数年間の研究技術のめざましい開発に伴って各研究分野において新知見が急増し,専門書はもちろんのこと教科書も益々厚くなる一方である。このささやかな特集が自律神経系の形態と機能のアウトラインの理解に少しでもお役にたてば幸いである。神経系は体性神経系と臓性(自律)神経系とに分けて取りあつかわれるが両者の相互関係はこれからの新しい研究分野の一つで,本特集の最後の章でこの分野の状況の一端が具体的にご理解頂けると思う。神経解剖の教科書をみてすでにご承知のように自律神経系の記述にさかれるのはたかだか一章である。一方,臨床神経学では自律神経系のウエイトはすこぶる大きい。今回の特集の執筆者はいずれも基礎部門に属しているので臨床サイドから見ると行き届かない点が当然多いことと思う。「自律神経系の基礎」とした点をお含みの上お読み頂ければ大変有難い。
神経系は体性系と臓性系とに2大別して記述されるが,臓性神経系の表記の仕方にはvegetatives Nerven—system (Reil,1807),autonornic nervous system(Langley,1898),involuntary nervous system (Gaskell,1916),Lebensnervensystem (R.L.Muller,1931)などがある。Reilが彼の植物神経系に求心系を含めていたかどうかは原著にあたっていないので不明であるが,あとの3つはいずれも遠心系のみを指すようである。一方,自律神経系を標題とする最近の著書,例えばKuntz(1953).Mitchell (1953),Pick (1970)などをみるといずれも求心系をも含めているから自律神経系は臓性神経系と同義になったとみなしてよい。神経系の区分に際しては体性,臓性神経系と表記し,後者のみを独立してとりあげる場合には自律神経系を使用するのが慣例となっているらしい。
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