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はじめに
自律神経系は脳および脊髄に存在する中枢部分とこれより出発して末梢器官に至る末梢部分から成り立っている。末梢自律神経系は中枢から自律神経節に至る節前ニューロン(Preganglionic neuron)と神経節より効果器に至る節後ニューロン(Postganglionic neuron)から成り立っているが,副交感神経系では一般に節前,節後ニューロンともコリン作動性ニューロンであり,交感神経系では節前ニューロンはコリン作動性であり,節後ニューロンはアドレナリン作動性であることが知られている。一方1972年以来Burnstock7)らは消化管平滑筋を支配する神経のなかにATPを放出するプリン作動性(purinergic)神経の存在を報告しているが,最近末梢自律神経線維中あるいは神経節細胞中にgastrin,VIP,substance P,somatostatin,コレチストキニン(CCK),エンケファリン,黄体ホルモン放出因子(LHRH),ボンベジンなどのポリペプチドが存在するとの報告がみられ,これらの物質と従来の伝達物質との共存の可能性が考えられ,末梢自律神経系の機能についての知識がより複雑に多様化しつつある。1例を挙げると,従来,自律神経は比校的低頻度の発火を示し,最大刺激効果は20H2附近でえられるとされている(Rosenbleuth44),1932;Hillarp25)1960)が,Anderson,Edwards,Bloomら1)(1982)の報告によると,アトロピンを投与しコリン作動系をブロックしたネコで,Chorda tympani中に含まれる副交感神経節前線維を0.5ミリ秒,20-30 Vで2Hz−10分間,または20 Hz 1秒間のバースト刺激を10秒間隔で与え,総計1200発の刺激により顎下腺副交感神経終末からのVIP放出量と,VIP放出による顎下腺血管抵抗の減少を観察したところ,バースト刺激により,より大きな効果が得られた。バースト刺激効果は頻度が高いほど大きく,80 H2で最大効果がえられた。すなわち,VIPの放出には高頻度,バースト状の刺激がより有効であり,放電パターンと放出物質の種類,量との間に関係があることを示唆する。Edwards17)によると内臓神経刺激による副腎髄質からのカテコールアミンの放出も同様であるという。さらに興味あることは,Bloom,Edwardsら6)(1984)の最近の報告で内臓神経(切断末梢側)刺激でバースト高頻度刺激が膵グルカゴン,血清中のボンベジン様免疫活性(BLI)の上昇あるいはインスリン放出の抑制には有効であるが,心拍,血圧など心臓血管反応では差はみられなかったという。自律神経における規則的あるいは不規則なバースト放電はポリペプチド放出に役割を果しているのかも知れない。
このように自律神経の臓器支配は多様化を示している。本編では腹部内臓の自律神経支配に重点をおき,その代謝調節機能を中心として最近の研究業績を含めて述べてみたい。
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