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I.自律神経系の用語
自律神経系の命名はLangley (1898)37) により,その定義40,41)は"多核横系文筋以外の組織に遠心性刺激を送る神経細胞と神経影線維"である。つまり平滑筋,心筋,腺を支配する神経系をさす。一方,Gaskell (1889)15)は神経系を,横紋筋を支配する体性系と内臓を支配する臓性系とに大別し,それぞれを運動系と感覚系に細分した。したがって自律神経系は後者の分類では臓性運動系にあたる。自律神経系の基礎的事項についてはこの二人のイギリスの生理学者に負うところが大きい。
自律神経系は機能的に拮抗する頭仙髄交副交感系と胸腰髄交感系に区分され,それぞれの系は節前線維と節後線維のリレーで効果器に到達する(図1)。節後線維の細胞体の集団は自律神経節とよばれ,その位置によって3種に分類される。すなわち,椎体の両脇に沿って対をなす椎傍神経節(交感幹神経節),大動脈前壁に接する椎前神経節(腹腔神経節,上・下腸間膜動脈神経節,腸間膜動脈間神経節,上下腹神経節),効果器の近傍ないしはその内部にある終末神経節(頭部副交感神経節,筋層間神経節,粘膜下紳経節,骨盤神経節,その他臓器内の神経節例えば心臓神経節など)である。このうち椎傍・椎前神経節は交感系に,終末神経系は副交感系に属する。これらの用語のうち,交感・副交感系,節前・節後線維はLangley (1895,1905)36,39)に,椎傍・椎前・終末神経節はGaskell (1886)14)に由来する。もっとも,交感神経の用語はオランダの解剖学者Winslow (1732)が今日でいう交感神経幹とその枝全体に対してle grandsympathiqueと命名したのに由来するという。喜怒哀楽の感情を内臓に分ち与える神経という意味で,内臓の活動が感情によって左右されるという日常経験に依拠するらしい48)。
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