書評
—編著 H. Houston Merritt 監訳 椿 忠雄(東京都立神経病院院長)—メリット神経病学 第2版(原著策6版)
平山 恵造
1
1千葉大学
pp.355
発行日 1984年4月1日
Published Date 1984/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205299
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原著は広く知られた名著であり,その序文にもあるように非常に多くの部数が全世界的に出版されているとともに,何か国語かに翻訳されている。その特色の一つは紙面に比し内容が豊富なことで,別の言い方をすれば無駄な表現がなく,十分な内容をできるだけ少ない文字で表わしていることである。これは筆者が本書の初版を読んだときからの印象であり,また他にもそれを指摘する方方がある。このような文章が書かれるには,それなりの努力がなされたという噂を聞いたこともある。それはともあれ,今回の翻訳(訳書改訂版)の元になった原著第6版では,必要に応じて概説的記述が盛られていると同時に,新しい知見も十分に追加され,また基礎的神経科学basicneuroscienceもほど良く取り入れられて充実した内容となっている。教科書は専門書と異なって詳細に記述すればよいというものでなく,項目の取捨選択には一つのvisionが必要である。その点からも本書にはMerritt教授の一つの見識を思わせるものがある。
ところで,一般に翻訳というものは原文に忠実,というよりは直訳になりがちなものであり,そのため日本語として違和感をもったものになることがあるが,本訳書は全体としてよい文章で綴られており,全部とはいえないまでも,日本人が日本語で書き下したと思われるような章も見受けられる。その点分担された訳者の方々の苦労がうかがわれるし,また監訳者の並大抵でない努力に敬意を表したい。
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